ひ か り 、 流 れ て
原作ベース。
あの夏が千年も前のことのよう。
きみは今も、この世界を見ているのだろうか。
ひとの生まれ変わりを見届けて、いのちに触れて、何を想うのだろうか。
携帯電話の画面が明滅してメールの着信を知らせたのが、昼過ぎ。
特定の部活に入っていない亘だが、運動神経はかなり良い方だ。
誰が流したわけでもないのに亘の家庭環境はみんなが知っていて、無理に入部しろとは言ってこない。
それでもこうして人数の足りない試合の日や時間のある日は駆り出されることになっている。
先週は野球、今日はサッカー、陸上もそろそろ声のかかりそうな時期だ。
陽はすっかり傾いて、グラウンドの土埃だらけの部員たちが水を求めてベンチから離れてゆく。
亘は誰も居ないグラウンドを見るのがすきだった。
ここに存在するはずだった彼のことを思い出し、この瞬間に当てはめるのがすきだった。
「いつもありがとう、三谷くん」
サッカー部のマネージャーが缶のスポーツドリンクを渡した。
これが助っ人参加の報酬、ということになっている。
「いいよ、僕がすきでやってるんだ。気にしないで」
「うん、でも本当に助かってるの。入部してくれたらな、っていつも思ってる」
あ、無理だってわかってるよ、三谷くん色々大変なんだよね、とあわてて付け足した。
「来週の練習試合、どうかな。土曜だし、今回はうちのグラウンド使うの」
「そっか、うん、それなら多分行けると思うよ」
よかった、これで勝てるよと意気込んで、すぐに思いつめた顔になった。
「あのね、聞きたいことがあるの」
「なに?」
「その、あのね、付き合ってるひとって、いる?」
驚いて目を瞠ったら、彼女は顔を真っ赤にして俯いた。
「いないよ」
その言葉で顔を上げた彼女は、小さく震えた声で言った。
「わたし、三谷くんのこと、」
「・・・ごめん」
夕陽が眩しくてあつくて、なんでこんなに、と思った。
「付き合ってるひとはいないって…じゃあ、好きなひとが?」
少しだけ顔を傾けて、亘はさみしそうに笑った。
「・・・もう二度と会えないのに、ばかみたいだけどね」
「もう二度とって…それって」
「違うんだ、いる場所は知ってる。でも僕はそこに行くことは許されないんだ」
どんなに願っても、何をしても、たどり着けない場所。
「ねえ三谷くん。ばかみたいじゃないよ。全然ばかみたいじゃないよ・・・」
そんなふうに想われて、しあわせだね、いいね・・・うらやましいな。
「千年後、生まれ変わったら逢えるかもしれないけどね」
冗談めいて言ったけれど、彼女は真剣に頷いた。
「うん。そうだといいね・・・きっと、逢えるよ」
泣きそうな顔で笑ったふたりが見上げた空、その遠い場所で光のようなものが一瞬輝いた、ような気がした。
夢をみてる。
焦がれてる。
僕に、未来をください。
2006.08.21
家事とかだけじゃなくて、弁護士目指して勉強もたくさんやってるから
部活できないっていう設定(言わなきゃわかんない!)
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